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三ノ宮駅編

三ノ宮駅、再始動!20XX年、「えき」も「まち」も激変する!?

小さな中間停車場としての開業から150年。三ノ宮駅は、水害や戦災、震災などを乗り越えながら、関西を代表する一大ターミナルへと発展を遂げてきた。そして今、これまでにない規模の再開発プロジェクトにより、駅周辺は新たに生まれ変わろうとしている。

駅前広場上空デッキイメージ(ミント神戸前から南西を望む)
駅前広場上空デッキイメージ(ミント神戸前から南西を望む)

6つの駅を大きな一つの「えき」と捉え、周辺の「まち」との繋がりを強化

JR、阪急、阪神、地下鉄(西神・山手線、海岸線)、ポートライナーの計6駅と、路線バスや中長距離バスの乗降場を擁する交通の一大結節点、三宮。新神戸駅や神戸空港、ポートターミナルへのアクセス拠点でもあり、国内外からの来街者を迎える神戸の玄関口としての役割も大きい。

しかし、6駅の改札階が地下、地上、デッキの3層レベルにあることや、バスの乗降場が分散していることなどから、乗換動線が分かりにくいという課題を抱えてきた。また、駅から周辺街区への繋がりが弱い、広場など人のための空間が少ない、駅前広場の交通結節機能が弱いといった課題もある。それらの解消に向け、神戸市は2015(平成27)年9月に三宮周辺地区の再整備基本構想を発表。2018(平成30)年9月には、6つの駅とバス乗降場を大きな1つの「えき」と捉え、周辺の「まち」との繋がりを強め回遊性を高める「えき≈まち空間」創出の基本計画を策定した。

「えき≈まち空間」の中核的存在。三宮ターミナルの新たなランドマーク

こうした三宮エリアの大改造プロジェクトにおいて目玉となるのが、JR三ノ宮駅の新駅ビル建設だ。2022年3月、JR西日本、都市再生機構(UR)、神戸市の三者が、開発計画の概要を発表。2024年3月には起工式が行われ、2029年度の開業に向けて新たなランドマーク整備が本格的にスタートした。

1981(昭和56)年に開業した「三宮ターミナルビル」は解体され、地上30階、地下2階、高さ約155mの超高層ビルへと生まれ変わる。ビル内のフロアは、駅設備のほか商業施設、ホテル、オフィスなどで構成される予定だ。

そして、「えき≈まち空間」の中核を担う新駅ビルでは、「えき」を結ぶ分かりやすい動線、「まち」へと開かれた空間など、「えき」と「えき」、「えき」と「まち」を繋ぐための施設空間を整備。神戸の玄関口に相応しい、多彩な魅力の創出に期待が高まる。

JR三ノ宮新駅ビル外観イメージ
JR三ノ宮新駅ビル外観イメージ

駅以外の周辺街区でも、さまざまな施設が新たに誕生

また、神戸市が掲げる「えき≈まち空間」の創出に向け、駅周辺街区でもさまざまな施設整備が進んでいる。

1日約1700便が発着する中長距離バスの乗降場は、駅周辺の路上に分散し利便性や交通弱者への配慮が十分でなかった。これらを、雲井通5・6丁目地区で整備を予定しているバスターミナル(Ⅰ期・Ⅱ期)に集約し、三宮バスターミナルと一体的に利用することで、西日本最大級の中・長距離バスターミナルとなる。2027年12月にⅠ期ビルの竣工を予定している。

「えき≈まち空間」におけるJR三ノ宮新駅ビルと新バスターミナルの位置関係
「えき≈まち空間」におけるJR三ノ宮新駅ビルと
新バスターミナルの位置関係
新たに生まれるデッキのイメージ
新たに生まれるデッキのイメージ

そして、2028年度頃には神戸市役所本庁舎2号館の建て替えが予定されている。老朽化で解体された旧2号館跡地に、高さ約140m、地上28階、地下2階の超高層ビルを新築。行政機能の本庁舎や市民利用空間に加え、民間機能のホテルやオフィス、商業施設から構成される複合施設だ。三宮駅からウォーターフロント、旧居留地など周辺エリアを繋ぐ結節点として、回遊性の向上や新たな賑わいの創出が期待される。

プロジェクトの先に見据えるのは、まちの強みや魅力とアイデンティティの向上

長きにわたり、神戸市の中核を担ってきた三宮。進取の気質に富んだまちとしての歴史を有しながらも、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災以降、復興を最優先にまちづくりが行われてきた。

ようやく次のステップに踏み出せる環境となり、2015(平成27)年9月に策定された神戸の都心の未来の姿[将来ビジョン] 、三宮周辺地区の「再整備基本構想」に基づき、超高層の新駅ビルやバスターミナルビル、市役所本庁舎2号館の再整備などの大規模な開発によって発展を遂げようとしている。プロジェクトとして興味深いのは、神戸市のまちづくり計画の下、官民一体だけでなく競合関係にある鉄道やバスの運輸事業各社が一体となって取り組んでいる点だ。その本質は、単に新たなビルを建設することでは決してない。冒頭で挙げた三宮のまちが抱える課題を解消し、まちの強みや魅力を高めること。また、古くから開かれた国際都市としてのまちのアイデンティティを取り戻すことでもある。